脱糞継続中=フジワラの姓を持つタイ人(庇護者)とその傍らに侍る手練の日本人。
庇護者の封建的支配者に対して、傍らに侍る手練の日本人は、ずいぶん歳を食っているが小姓のような立場を務めている。
いさかいは絶えないが、手練の日本人は、常に傍らに侍っている。ときにお互い、懐中に仕舞い込んでいる真剣を取り出しガチンコ勝負が行われる。その鍔迫り合いは凄まじいものがある。怒声が飛び交い、首を取ろうとする者、それはさせじとする者のせめぎ合いは、熾烈を極めた戦いとなる。
そして、お互い傷つき疲れ、休戦となるが、それでも手練の日本人は毎日毎日、24時間体制の休日なしで侍っている。「Siam」シャムに来て2年半近く。皆勤は続いている。
この皆勤賞の人物が、僕、ヌルピョンである。手練の日本人とは、僕のことである。分かってましたと思いますが。
さて、わたくし齢四十七になろうとしている。
五十路が見えるところまで、登って来ました。
それでもまだまだ成熟していない。
だって、未だに庇護者と僕は、肛門に人差し指をあて、その匂い付きの指を武器に、お互いの鼻の穴に突き立てられるかで先陣争いをしているのだから。
「それ~かかれ~!」
「いざ、ゆかん!」
お互い香り付きの人差し指を槍先に装着させ、敵陣向かって一文字に駆けて行く。そして、それを援護する形で、お互い歪な肛門の奥にガスを溜め、放つのである。
「それ~、放て~!」
ボーン!ボーン!
流石にプロ屁軍人、すかしっ屁など有り得ない。両軍乾いた爆裂音を出し、相手陣地に打撃を与えて行く。
一方、プンプン香りを放つ人差し指は、これら爆裂音にひるまず、相手陣地に深く切り込んで行く。
「右側の鼻の穴でも、左側でも構わないので取り付け~。」
と叱咤激励。
僕は、庇護者の鼻が天然でなく、人工なのを知っているので、匂い付きの人差し指を鼻の穴に突き刺せば、その後、指を引き抜くときに、
「シリコンも一緒に引き抜け~!」
と密命してある。
が、なかなか相手の軍装備を打ち砕けない。そう簡単にシリコン山には近づけさせてくれない。二百三高地の如く、烈火の火器が唸りヌルピョン軍を苦しめる。
また、庇護者側の大砲は、「脱肛」なので放ち過ぎると、忽ち砲身が焼け、赤黒くなり耐え切れず赤水を噴出してしまうが、それでも容赦なく放ち続ける。赤水に対して無頓着なのである。自分で洗濯するわけじゃないから。
ゆえに赤水が噴出すると我が軍に負担が舞い降りる。
また、洗濯もただすればいいわけじゃない。
洗濯物を取り込んだときに、庇護者の求めている匂いに達していないと責められるのである。
だから雨季時期の洗濯は、難しいのである。
僕は、タイに来てから、家事王になった。
昔々子供の頃、母親にこんなことを良く言われた。
「なんにも家のこと手伝わない子は、将来お嫁さんを貰ったら、なんにもしないお嫁さんが当たるで~。」
と、正にその通りになる。
これまで庇護者と言う代名詞で登場して来たタイ人女性は、僕の新しい奥さんでもある。10年ぶり2度目の甲子園出場。否ちがう10年ぶり2度目の結婚を今年の7月にした。
そして、僕はこの女性を通してタイ王国を、タイ人をゆっくり少しずつ理解する努力を重ねて来た。
2年半近く経ち、僕は少しずつタイ人化が進み、タイ人について、ひいてはタイ文化にぼやかなくなった。
その代わり、少しずつ日本をぼやくように成り出した。
例えば、時刻表。こんなものはタイランドに存在しない。待っていたらいつか電車やバスはやって来る。日本では、山手線のような頻繁にやって来る電車ですら貼り出してある。もうサービスが細かすぎて、デタラメさがないので面白みが生まれないような感じがします。
このまま行けば、たぶん僕は、日本に帰る気もないのでタイ人になって、この地で死んで行く様に感じられる。
ほんの3年前まで、タイに住むことすら考えなかった人が、こうも成るとは。
今じゃあ、タイ贔屓の日本人に成りつつある。将来は、売国奴にも成りかねない。
おそらく最後の地「タイランド」からお届けいたします。これからも。
「うわぁ~、こやつ何者だ~!」
庇護者側のプンプン臭いを放つ人差し指が、我が本陣に乱入。
悠長に随筆なんか書いてる間に、敵の精鋭の侵入を受ける。
「ヌルピョンの鼻の穴をお守りしろ~!」
しかし既に時遅し、乱戦になり命令系統は入り乱れ、援護砲のガス砲もイボ痔が露出して使い物にならない。
逃げ回るヌルピョンの鼻の穴めがけて、プンプン臭いを放つ人差し指は、声高らかに、
「ヌルピョン見参!」
「その鼻、貰い受けまする~!」
と追い回し、追い詰め。
追い回されたヌルピョンは、遂に髪の毛を捕捉され、さらに両鼻に指を入れられ、ブタ鼻になったところで、
「ご覚悟!」
の言葉と同時に、プンプン臭いを放つ人差し指を鼻の穴に押し付けられるのである。当然、ヌルピョンは悶絶する。最後に放った言葉は、
「うん?」
「わぁ!クサッ、クサクサ。」
であった。
辞世の句は、伝わっていない。
シャムで家事王の称号を賜るヌルピョン氏